マスクで熱中症注意!

2021/06/28 ブログ
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ここ数年“暑い夏”が続いています。加えて、外出の機会も少なく、マスクも手放せないニューノーマルな生活。そんな中で注意したいのが「熱中症」。本来、屋外で過ごすことで体は暑さに慣れますが、それができないと熱中症にかかりやすいからです。特に注意が必要な方の特徴や、ニューノーマルな生活の中でも上手に熱中症を予防する方法をご紹介します。

特に高齢者は熱中症になりやすい
ダイエットや筋肉量の少なさもリスクに

熱中症とは熱に中る(あたる)という意味です。人にはもともと体温を調節する機能があり、体温が上がり過ぎれば自律神経の働きで末梢の血管が拡張し、皮膚に多くの血液が流れ込んで皮膚を赤らめ、熱を体の外に放出します。また、汗をかくと、汗が蒸発するときに体の表面から気化熱を奪い、体温を下げる働きをします。しかし、「高温」や「高湿度」の環境にいたり、そこで運動などをすることで体温が急激に上昇すると、体温調節機能が乱れてうまく体温を下げることができず、様々な体調の異常や症状を引き起こします。このように、高温や高湿度が原因で起きた体調不良の総称を熱中症といいます。

同じ環境にいても、熱中症になりやすい人とそうでない人がいます。
最も注意が必要なのが、高齢者。
「加齢により体に水分を蓄える力が減るのに加え、喉の渇きを感じる感覚が低下して水分補給が遅れたり、体の不調を自覚しにくいからです。さらに、加齢に伴い心臓や腎臓の機能が低下していることも多く、水分の出入りを調節する能力も衰え脱水症状を起こしやすいのも一因です」
このほか、乳幼児、妊婦、肥満の人、ダイエット中で食事量が少ない人、利尿薬や下剤を服用中の人、暑さに体が慣れていない人も要注意です。

「熱中症のリスクが最も高いのは高齢者ですが、若い人でもかかる可能性はあります。健康な人でも重篤化する場合があり、決して油断しないようにしましょう」

こんな人は熱中症に注意

□高齢者

・加齢により体に水分を蓄える力が弱まる

・感覚が衰えがちで、喉の渇きや体の不調を自覚しにくい

・心肺機能の低下で脱水を起こしやすい

・常用薬を服用していると、薬の影響で脱水しやすい

□乳幼児

・体重に対する体表面積が大きく、不感蒸泄による脱水をおこしやすい

・身長が低く輻射熱を受けやすい

・遊びに夢中になると喉の渇きを忘れがち

□女性

・筋肉量が少なく、特に月経中は体が脱水傾向に

□妊婦

・妊娠中は基礎代謝が上がり、体温が高くなりやすい

・通常より水分が必要で脱水になりやすい

□肥満

・体内に熱がこもりやすい

□ダイエット中

・水分や栄養不足で脱水を起こしやすい

□筋肉量が少ない

・やせすぎ

・体の中の最大の水分の貯蔵庫である筋肉が少ないため体に水分を蓄える予備力が少ない

□暑さに体が慣れていない

・体温調節機能が乱れやすい

□疲れている

・体温調節機能が乱れやすい

□糖尿病や動脈硬化

・体温をコントロールする自律神経に障害がおき、体温調節しにくい

□腎臓病

・水分代謝の力が弱っている

□薬を服用中

・利尿薬、降圧薬、向精神薬などの中には脱水を起こしやすくするものもある為

実は多い、室内での熱中症発症
室内ではエアコンをかけて

熱中症というと、「炎天下に屋外で起こすもの」と思っていませんか?
実は、高齢者が熱中症で救急搬送されたときの発生場所は、屋外より住居内の方が多いのです。

2020年の横浜市内のある区における熱中症の発生状況を調べた調査では、屋内でエアコンをつけていない状況での発生数が屋外作業時を抜いて第1位でした。

「特に高齢者では、エアコンをつけると寒い、光熱費がかさむといった理由でエアコンの使用を控える人もいますが、室温が28℃を超えないようにしっかりと冷房を使うことが大切です。もしも寒いと感じるなら、エアコンを付けた状態で靴下を履いたり上着を羽織りましょう。また、扇風機を使う場合は、エアコンと併用して直接体に向けずに、壁に当てて空気を循環させるだけでも気化熱で体温が下がります」

同じ室内でも窓際などでは温度が上がります。自分が過ごす場所の温度を測るようにしましょう。

また、温度と同じく重要なのが湿度。「気温がさほど高くなくても湿度が70%を超えるほど高いと汗が蒸発しにくく体から気化熱が奪われず、熱がこもりやすくなるので要注意です」

熱中症発生状況の変化

2019年と2020年の熱中症発生状況を比較。2019年は「屋外作業」が1位だったが、2020年は「居室内エアコン使用なし」が1位となった。(データ:済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜先生提供)

本格的な夏が来る前に体を暑さに慣らし
暑熱馴化(汗をかけるカラダづくり)を

「例年、熱中症患者の発生者数は、梅雨明け後の最初に気温が高くなる日に急激に増加します」

これは、体が体温の上昇に対応しきれないためです。

暑さを感じたときにすみやかに体温を下げられる体作りのことを「暑熱馴化(しょねつじゅんか)」といいます。これにより低い体温でも汗をかきやすく、皮膚の血流量も増えるため、体から熱を逃す力が増します。ウォーキングなどで日頃から汗をかく運動を続けていると、本格的な暑さが到来する前に暑熱馴化できます。
ところが、「在宅時間が長くなりがちな昨今は汗をかく運動の機会や気温の変化に接する機会が減り、多くの人が暑熱馴化しにくい状況にあります」

では、どうしたら暑熱馴化させられるのでしょうか。

「1つは運動、もう1つが入浴。いずれも汗ばむ程度が目安です」
通常、暑熱馴化のためには早足でのウォーキングなど、深部温度(脳や内臓など体の内側の温度)を1℃以上上昇させる運動が必要とされます。こうした運動をするなら、人混みを避けられる時間帯や場所で、汗ばむくらいのペースで行いましょう。
「その際、人と離れた所ではマスクは適宜外して、途中で水分補給を行うことも大切です」

一方、外での運動ができない場合におすすめなのが入浴です。

「湯温40℃位のお風呂に10~15分の入浴を毎日継続すると暑熱馴化に相当する効果が得られます」すでに毎日入浴している人なら、「湯温を高めにする」「浸かる時間を長くする」「風呂のフタを閉めて顔だけ出しサウナ効果を高める」「入浴剤で血流を良くする」といった工夫で温熱の負荷を高めればOK。入浴前後の水分補給も忘れないようにしましょう。

自分の体は暑熱馴化ができているかどうかも気になるところ。それを知る目安として、「入浴中に汗を舐めてみるのも一つの方法。体が暑熱馴化できていないときは汗がべたつき、塩辛い。暑熱馴化すれば体が汗を作る際にナトリウムなどを再吸収する機能が高まり、汗はさらっとして無味になります」

暑熱馴化の効果はどれぐらいの期間で得られるのでしょうか。「暑熱馴化は1週間から2週間で獲得できます」「暑熱馴化による体の変化をみた研究では、3日目ぐらいから血液の水分量が増え、血流が高まり、同じ運動量でも発汗量が増すようになりました(グラフ)」ただし、「3日以上中断すると元に戻ってしまうので、続けることが大切。外気温が暑くなる前、気温が上昇し始める春先から継続し、暑熱馴化して欲しいですね」

暑熱馴化による生理的指標の変化の推移

暑熱馴化による生理的指標の変化の推移

運動による暑熱馴化開始後、最初の3日目から血漿量(血液中の水分量)が増える。このため1回あたりの血液拍出量が増えて心拍数が低下する。心血管系へのストレスが軽減され、温熱への快感評価が増す。深部体温と皮膚温が低下するとともに発汗量が増し、その結果、運動能力も向上するのは14日後となる。
(データ:Scand J Med Sci Sports. 2015 Jun;25 Suppl 1:20-38. を元に作成)

(Topics)「マスク熱中症」にご注意!

マスクの着用が日常になった今、それが熱中症のリスクになることも頭に入れておきましょう。
人は体から熱を放散するための様々な仕組みを持っています。汗をかくこと、皮膚の血流を上げること、皮膚の血管を拡張するなどです。そしてもう一つの仕組みに「呼吸」があります。犬は汗をかかないので、暑くなると「ハー、ハー」と激しく息を吐いて体温を調整していますがそれと同じです。マスクをすると、通常に比べ呼吸が妨げられ、体熱放散しにくくなるのです。特に子どもはその影響が顕著に見られますので要注意です。

例えばマスクを着用して1時間、5kmのジョギングを行った研究では、マスク着用時の運動では有意に心拍数、呼吸数、二酸化炭素が増加し、マスクをつけた部分の皮膚温度は1.76℃上昇していました※。
「マスクの着用と熱中症の因果関係は定かではありませんが、ある自治体で2020年5~8月に救急搬送された熱中症患者さんの約38%が救急隊が現場に到着した際にマスクをつけていました。マスクをしていると口の渇きを感じにくくなり、水分補給が不十分になり、気づかないうちに脱水が進む危険性もあります。さらに、子どもは大人と違って口呼吸をすることが多く、呼吸数も多いため、マスクで口呼吸しにくい状態は熱中症を招く可能性があります」
暑い時には人ごみを避け、適宜マスクを外すことも必要でしょう。

熱中症予防には水分補給
喉の渇きを感じる前から「こまめに少しずつ」
子どもには保護者が注意を

熱中症を予防するための方法は、(1)適切な水分補給、(2)体の冷却、(3)熱中症に関する情報の確認の主に3つです。

(1)適切な水分補給

「水分補給は、"予防"にも"治療"にも必要です」
予防のための水分補給のポイントは、「こまめに少しずつ」とることです。
「目安は、1時間おきにコップ1杯(200ml)程度。運動をするときには、できれば10~20分おきに水分をとるのが望ましいでしょう。特にマスクをしていると喉の渇きを感じにくいので、自分の感覚をあてにせず、決まったタイミングでとりましょう。1日に最低でも8回の水分補給機会を設けましょう」

特に、自分で喉の渇きを訴えられない乳児や、喉が渇かないと飲もうとしない子どもの場合には、保護者がタイミングを見て飲ませることも大切です。

水分補給には、しっかり食事をとることも大切です。
「一般に、成人では3食とることで食事から約1,100mlの水分をとっています。また、栄養素が体内で代謝される時に水が作られ、その量は約300mlともいわれ、1日の水分摂取の多くを食事が担っているのです。発汗で失われる塩分も、食事でとることができます。一般に日本人の塩分摂取量は多め。しっかり食事をしていれば塩分補給はできるので、通常の生活をしている場合の水分補給はスポーツドリンクではなく水やお茶などで十分です」

塩分や糖分を含む経口補水液やスポーツドリンクで日常的に水分補給をすると、ついつい塩分・糖分をとり過ぎることもありえます。「特に高齢者や子どもはスポーツドリンクを日常的に飲むと、それで満腹になり食事をとらなくなることがあります。それでは本末転倒なので控えましょう」
一方、経口補水液やスポーツドリンクが必要になるのは、運動などで大量に汗をかいたときです。「下着を替えたくなるくらい大量の汗をかいたら、スポーツドリンクや経口補水液のほうが効果的に脱水を予防できます」

水分をとる際、冷たい飲み物のほうが体温が下がりそうですが、「胃に冷たい水分が大量に入ると、体は消化酵素などが働きやすい温度に戻そうとして体温を上げてしまいます。通常は冷たい飲みものをとり過ぎない方がいいでしょう。ただし、38℃以上の高熱があるときは、体を内と外から冷やします」
また、アルコールも利尿効果があり水分を排出してしまうので逆効果。「ビールで水分補給」とはならないのでご注意を。熱中症予防のための水分補給のポイント

  • 1回にコップ1杯(200ml)程度
  • 通常は1時間おき、運動時は10~20分おき
  • 冷たすぎない水を(38℃以上の高熱時は除く)

熱中症情報を賢く活用
外出時は体を冷やせるグッズを

次に、熱中症を予防するための残りの手段となる(2)体の冷却、(3)熱中症に関する情報についてご紹介します。

(2)体の冷却

外出時は、こまめな水分補給はもちろんのこと、体を冷やせるグッズを携帯するのも有効です。
「外出時に気をつけたいのが、日差しで首元が熱くなること。首には太い血管があるため、ここが熱されると頭の体温(深部体温)が上がりやすく、熱中症リスクを高めるからです」これを防ぐには、首に日光が当たらないように帽子をかぶるなどの工夫を。また、冷却ジェルシートや、保冷剤などを携帯して冷やすのも効果があります。

(3)熱中症に関する情報

熱中症対策では、賢く情報を活用することも大切です。
熱中症の危険は、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)=暑さ指数で知ることができます。暑さ指数とは、熱中症予防を目的とした指数で、気温、湿度、日射・輻射(地面や建物からの照り返し)の3つの熱環境をとりいれた指標です。「WBGTが31℃以上(危険であるため運動は原則中止)、あるいは28~31℃(厳重警戒。激しい運動は中止)の場合には、屋内であってもエアコンのない部屋にいることは危険とされています」
リアルタイムのWBGTは、環境省の「熱中症予防情報サイト」など、気象情報サイトなどに毎日掲載されています。また、場所と時間を細かく分けた熱中症情報が掲載されているサイトもあるので、その日の行動の目安にしましょう。

(Topics)with コロナでは熱中症以外にもステイホームのリスク?!

ニューノーマルな生活では、熱中症以外にも、様々な心身の健康への影響も懸念されています。テレワークの推進に伴う運動不足では体力の低下や生活習慣病の発症のリスクが高まるほか、人との関わりが希薄になることは認知症のリスクにもつながると考えられます。広島大学が介護施設や介護支援専門員などを対象に行った調査では、約4割の患者で認知機能の低下や日常生活動作の低下が見られ、約3割の認知症患者で症状が悪化したとの結果が出ています※1。

また、太陽光に含まれる可視光線の「バイオレットライト」には、近視抑制効果があるとされ、1日2時間以上屋外活動をすると近視の進行が抑えられることがわかっています※2。ステイホームで外で遊ぶ機会が減ると、子どもたちの近視のリスクが高まることが懸念されます。「熱中症予防」と「密を避け」ながら、太陽の光を浴びましょう。

※1 参考:広島大学のオンライン調査
※2 Invest Ophthalmol Vis Sci. 2007 Aug;48(8):3524-32.

十分に備えたつもりでも、疲労や体調不良などの悪条件が重なると、熱中症になってしまうこともあります。誰もがかかり、重篤化するおそれがある熱中症。初期症状を見極め、適切に熱中症に対処しましょう。危険な症状やその原因、応急処置のポイント、冷やすと効果的な体の部位など、対処法をあらかじめ知っておきましょう。

熱中症を引き起こす条件は「環境」と「からだ」と「行動」

熱中症を引き起こす条件は、「環境」、「からだ」、「行動」の3つと考えられています。「環境」要因は、気温や湿度の高さ、風の状態など。「からだ」の要因には健康状態の悪さ、脱水している、暑さへの慣れ(暑熱馴化)が不十分といったことがあり、「行動」要因には、長時間の屋外作業や激しい運動、水分補給できない状況などがあります。

例えば室内でも、お風呂場や家の最上階などは湿気がこもりやすい場所です。温度が高くなくても熱中症の危険度は高まるので、窓を開けて風通しをよくしたり、冷房をつけて温度とともに湿度も下げたりするように環境を整えましょう。また、「からだ」を整える上で注意が必要なのが脱水しないことです。特に入浴では発汗も伴い脱水しやすいので、長風呂を避けて前後に水分を補給しましょう。炎天下に長時間いることは、その「行動」が熱中症を起こしやすい条件の一つになるので気を付けましょう。

意識消失、嘔吐、しびれ…こうした危険な症状は
「脳」「消化器」「筋肉」3つの臓器が影響を受けるため

熱中症の初期には、「頭痛」や「めまい」、「だるさ」、「吐き気」など、様々な不調が原因のありふれた症状が起こります。「熱中症による脱水で特に影響を受けやすいのが脳、消化器、筋肉。いずれも機能の維持に水分が多く必要な臓器です。脱水の症状がこれらの臓器に起こりやすいのです」これらの臓器の変調で起こる症状が出たら、熱中症を疑いましょう。3つの臓器の変調で起こる様々な症状

  • 脳:めまい、立ちくらみ、集中力・記憶力の低下、頭痛、意識消失、けいれん
  • 消化器:食欲の低下、ムカムカする、腹痛、下痢、便秘、嘔吐
  • 筋肉:筋肉痛、しびれ、麻痺、こむら返り

特に早めに熱中症のサインに気づく必要があるのが、熱中症リスクが高く重篤化しやすい子どもや高齢者です。自分の不調をうまく伝えられない乳幼児や高齢者の場合、機嫌や食欲、普段とは違う行動などを観察しましょう。ちなみに、「高齢者は脇の下で測る体温は正確な体温を反映しておらず、熱中症でも上がっていないケースもあるので、体温が低いからといって油断は禁物です」

〈乳幼児の症状チェック〉

□不機嫌であやしても泣き止まない

□泣いているが涙の量が少ない

□食欲がない□眠りがち

□熱があるのに発汗しない

□尿の量が少ない

□便が硬くコロコロしている

□口や鼻の中が乾いている

□舌が白っぽい
※新生児ではおでこの上のくぼみ(大泉門)が陥没している

〈高齢者の症状チェック〉

□なんとなく元気がない、言葉数が少ない

□落ち着きがない

□食欲がない

□眠りがち

□便が硬くコロコロしている

□脈が速い

□舌が乾いている

□手足が冷たい

熱中症かも。そのとき何をすべき?医療機関に行く見極めポイント

症状から熱中症を疑う場合には、まずは次の3つを実践しましょう。詳しい情報は環境省の「熱中症予防情報サイト」にも掲載されているので参考にしましょう。涼しい場所に移動する屋外なら日陰で風通しのよいところ、エアコンの効いた室内や車内へ。体を冷却する冷たいペットボトルを手に持ったり、首や両脇、鼠径部などの太い血管がある場所を冷やす。衣類のきつい部分をゆるめ、露出した部分に冷水をかけてうちわや扇風機、タオルなどであおぐことでも体を冷やせます。塩分を同時に補給できる経口補水液を飲む熱中症の応急処置として補給する水分は、脱水状態で不足している塩分などの電解質を同時に補給できる経口補水液をゆっくりと飲みます。一般的なスポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、水と電解質の吸収を早めるためにスポーツドリンクより低い糖濃度になっているからです。ちなみに、通常は塩辛く感じる経口補水液が、脱水や疲労時には甘く飲みやすく感じることがあるようです。もちろん、経口補水液がない場合には、スポーツドリンクや水などでも十分量飲むことが大切です。

ただし、意識がはっきりしないとき、嘔吐のあるときは無理な水分補給は避けましょう。
「脱水時の経口補水液を飲む量の目安は、小学生~高齢者は500~1,000ml/日、幼児は300~600ml/日、乳児は体重1kgあたり30~50ml/日です。ただし、症状が改善しない場合にはこの量にとらわれずに十分な量の摂取を心がけましょう」

これらの対処で症状が治まれば、休息をとった後自宅で安静にしましょう。
自分での対処を超えている緊急性の高い場合の見分け方は「意識がしっかりしているかどうかと、自分で水が飲めるかどうか。この2つを確認してください」自分の名前や現在いる場所を言えない場合は「意識がおかしい」ということ。この場合はすぐに救急車を呼ぶ必要があります。

水分を飲めるかどうかは、「本人にペットボトルを渡し、自分で開けて飲むことができるようならひとまず安心。一方、力が入らず開けられない、ごくんと飲み込めず口からこぼれてしまうようであれば、すぐに医療機関での処置が必要です。この場合も救急車を呼びましょう。もともと筋力が強くなく、ペットボトルのフタを自分で開けられない子どもや高齢者の場合は、水を飲み込めるかどうかを目安にしましょう」

環境省「熱中症 環境保健マニュアル2018」

症状がある時は首・わきの下の「太い血管」、
症状が出る前の効率的な冷やし方には「手のひら冷却」を

ふらつく、意識が低下する、頭痛や吐き気などの熱中症の症状が出ているときには、すみやかに首や脇の下などの太い血管を冷やして体温を下げることが重要です。一方、症状が出る前に効率よく体を冷やす方法として注目されているのが「手のひら冷却」です。

手のひら冷却の仕方手のひら冷却の仕方

緊急時の冷却の仕方緊急時の冷却の仕方

これは、洗面器に10~15℃の冷たい水を張り、5~10分間両手をつけるというもの。
「運動をして深部体温を39.2℃まで上昇させた後に手のひら冷却を行ったところ、首や脇の下を冷やすよりも効果的に深部体温が下がることが確認されています」

手のひらや足裏、頬には、動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう)という動脈と静脈を結ぶ血管の部位があります。「動静脈吻合は毛細血管に比べて直径が10倍と太く、血流量は約1万倍と多いため、ここを冷やすと大量の冷えた血液が体内に戻り、深部体温を効率よく冷却できるのです」

「一般の人でも、たとえば熱中症リスクが高まる夏場の屋外での運動前に手を水に浸けたり、運動の合間にペットボトルなどで手やほほを冷やすと体温上昇を抑えられ、熱中症予防だけでなく疲労を抑え、パフォーマンスを高めることもできます。自律神経の働きも改善されるため、イライラしたときに心を鎮めたり、就寝前に行えば熱帯夜に眠りの質を高めるのにも役立つと考えられます」

ただし、この場合の水の温度は冷たすぎないことが大切です。「氷をたくさん入れるなど、冷たくしすぎると血管が収縮して血流が悪くなり、かえって適切な効果が得られなくなってしまうからです」

手のひら冷却で深部体温が下がる

健康な成人男性10人が高温環境で深部体温が39.2℃に上昇するまでトレッドミル運動を行い、首・脇の下・そけい部を冷やしたとき、手のひら・足裏・ほほを冷やしたとき、冷やさないときの深部体温の推移を見た。結果、手のひら・足裏・ほほを冷やしたときに最も深部体温が速やかに低下した。

(Topics)熱中症による頭痛か迷ったら頭痛薬を飲まずに、まず「冷却・水分補給」
それでおさまれば熱中症の可能性

「頭痛」は日頃から多く人が経験する症状で、熱中症のときに現れることもあります。熱中症の頭痛を判断する方法はあるのでしょうか。熱中症による頭痛は、脳が脱水状態になることや、体温上昇によって起こります。「軽くズキズキする程度から頭が割れるようなど、痛みの程度は様々。また、暑い環境にさらされたことで翌日頭痛が起こることもあります。痛みの程度や起こり方で頭痛の原因が熱中症かどうかを判断するのは難しいでしょう」

では、熱中症が疑われる場合、頭痛薬を飲んだ方が良いのでしょうか?偏頭痛などの持病があると、ついいつもの薬を服用しがちです。
「結論からいえば、薬を飲む前にまず、"涼しい場所に移動し、体を冷却し、水分補給する"という熱中症への基本とされる対処を行いましょう。1時間以内に頭痛が治まれば熱中症が原因と判断できます。また、頭痛のほかに筋肉や消化器の症状があるかどうかも判断の目安になります。それらの他の症状があるなら熱中症の可能性があります」

脱水が起こっているときに、上記の対処をせずに先に鎮痛薬を飲むと思わぬ危険な症状を起こす場合もあります。
「鎮痛薬を継続的に飲んでいる人が脱水時に鎮痛薬を飲むと、筋肉の細胞に融解や壊死が起こり、腎臓に負担がかかって尿が出にくくなるなどの腎臓障害を起こし重篤化する『横紋筋融解症』を起こすことがあります」脱水症状があるときに鎮痛剤を飲むことは避けましょう。脱水は他にも別の病気や症状の原因になるので、日常的に予防することが大切です。

熱中症、脱水症状時の基本とされる対処をしても良くならなければ、他の原因による頭痛の可能性も考えられます。その場合、まず頭痛薬を服用して様子を見るという選択もあります。ただし他の病気が原因になっている場合もあるので、頭痛薬でも症状が治まらなかったり、普段経験したことの無い頭痛や原因が思い当たらない頭痛の場合は、医療機関を受診しましょう。

 

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